2010年に日本の若手マリンバ奏者である大森香奈からアプローチを受けて、彼女に捧げる新しいマリンバの曲を作曲することになった。彼女は、 よく知られていてしばしば演奏されている私の作品《イリヤーシュ》と《ウルティマトゥムT》の中間のような曲を、と依頼してきたが、もう1つの「スラヴ」気質の作品を作曲する時間を見つけるまでに、約4年が必要だった。
 「ホモ・バルカニクス」というのはもちろんイメージにすぎないが、私個人の中に存在する思考や感情の「(生物学的な)種」である。曲のタイトルは、非常に独特で、特に過去において、しばしば「荒々しい」生き方、考え方、振る舞いをする「バルカン諸国」の人々のことを示唆している。
 この曲は、全体を通じて(私がもともと計画していたよりもさらに)調性のあるものになった。非常に力強く、感情的な旋律で始まり、それはその後すぐに、 グルーヴの効いた開放的で非常に不規則なリズムと組み合わされる。曲のいくつかの部分は厳密に小節線や拍子を用いて書かれている一方、他の部分は自由な拍子やリズムで構成される「センツァ・ミズーラ(自由な拍子で)」が使われている。バルカン諸国の多くの民族にとって音楽とダンスが最も重要な部分であることから、低音のコンガもしくはトム(いずれも布でカバーをする)をマリンバの低音側に足すことで、田園風の儀式での踊りの雰囲気を付け加えた。
 さて、バルカン諸国とは何なのか? それは、精神が計り知れないほど巨大な場所、愛と憎しみ、涙と喜びが入り交じった場所、そしてお互いが驚くほど表情豊かに愛らしく織り交ざり、しかし野蛮で危険な集合体でもある。つまり、この曲を演奏する際に、表現が豊か過ぎるということはありえない————バルカン民族に「度を越す」ということは存在しないのだ————すべての感情はより感情的に、すべての愛はより愛情を、すべてのグルーヴはよりグルーヴィーに、すべてのフォルテはよりフォルテに…。この曲を演奏するのに、「腫れものに触るような丁寧な取り扱い」は必要ない。(ネボイシャ・ヨハン・ジヴコヴィッチ)

 大森香奈により委嘱され、大森香奈に献呈する。
2014年6月29日、大阪、ザ・フェニックスホールでの「大森香奈ソロ・リサイタル」にて、大森香奈により世界初演。

 
 
 

 大森香奈からのリクエストを受けて、2013年にこの曲の作曲を始め、2015年に完成した。
 「瞑想T」は、それぞれ特有のメロディ、響き、雰囲気を伴った6つの小片からなり、それらを続けて演奏することによって一曲を構成している。左手で絶え間なく奏でられる低音でのオスティナートが「サウンドスケープ(音による風景)」を生み出し、全ての音楽的要素がその上で物語を紡ぎだしている。
 この曲を、大森香奈に捧げる。(コンスタンシア・ゴルズィ)

 
 
 

 オリジナル曲は1996年にマリンバとピアノのために書かれた楽曲《Gurissen Music for Marimba》。2015年に、一部作曲し直し、中川佳子氏によりマリンバDUOバージョンにアレンジされ《Gerissen ~Artfulness to Light~》として生まれ変わりました。 Gerissen(ゲリッセン)はドイツ語で悪賢いという意味です。また音楽的には鍵盤から素早く手を離すという意味があります。 ~Artfulness to Light~ は悪賢いでなく、苦しみからの明るい光をテーマに作曲しました。 作曲の手法としてはフィボナッチ数列を多く入れ込んだ作曲をしていて、ところどころ数学的と感じられる部分もあります。ポップスと現代曲の間を目指して作られた楽曲に仕上げています。(大久保宙)

 
 
 

 ゼンマイが緩むとテンポが緩み、ネジがまかれると元気を取り戻す人形の動きがイメージされている。冒頭、コンガ、ボンゴ、カウベル、ウッドブロックなどでにぎやかに提示された音型が、マリンバで再現されてメロディーが確立する。続く6/8のおだやかな部分では各楽器が思い思いに変奏する。この2つの部分がロンドのように交互に現われるが、4音からなる[H-E-H-A]とその移高音型が常にマリンバ、打楽器で奏でられ、人形に個性を与えている。ピアノは伴奏に終始するが、人形の制作者であり、曲を支配する。
 2015年3月1日に「はぴねす滝野」で初演された。曲は大森香奈に献呈されている。

 
 
 

 「神話」は、友人である大森香奈とマルシオ・シュスターの為に、私がドイツ国立ミュンヘン音楽・演劇大学大学院での勉強を終えようとしていた2009年の初めに作曲され、同年4月に初演された。
 日本人の打楽器奏者とブラジル人のサクソフォン奏者というコラボレーションはとても相性が良く、彼らはデュオを結成し、この曲は彼らのコンサートでも何度も再演されている。
 この曲は「イアラ」と「サシ」という2楽章構成になっており、ブラジルの神話に登場する2人の神を音楽的に描写したものである。
 「イアラ」は水と海の女神であり、人魚のような姿で描かれている。彼女の魅惑的な歌には魔力があり、歌を聞いた船乗りたちは正気を失い、海へと飛び込み、最後は死に至ることになる。
 「サシ」は森の魂であり、赤いキャップをかぶり、パイプ煙草を吸う姿で描かれている。彼は1本足にもかかわらずブラジル中の森を機敏に動き回り、森に侵入してくる人々にいたずらをして、自然を守っている生き物である。(ニコライ・ブリュッヒャー)

 
 
 

2010年の春、私は友人である大森香奈にマリンバソロ曲の作曲を依頼されて、その年の7月に「勾玉」を完成させた。その後すぐに彼女はイタリア・フェルモ国際打楽器コンクールのファイナル・ラウンドでこの曲を初演し、優勝を果たした。 作曲の形態と構造の要素は日本古来の神話から影響を受けている。 破壊の力を持つ海と嵐の神であるスサノヲが、術具(「勾玉」)で身を飾った太陽の神である姉のアマテラスと争って姉を負かしたことに始まる。弟に腹を立てたアマテラスは天の岩戸を開いてその中に身を隠してしまったため、太陽は消え、世界中が暗闇に包まれることになった。 長い間太陽のない暗闇の世界は続き、みんなが困り果てていると、そこにアマノウズメが現れて岩戸の前で歌や踊りを始めた。アマテラスを岩から誘い出そうという作戦である。 楽しそうな音楽が始まって周りが騒がしくなったのを不思議に思い、顔をのぞかせたアマテラスは、たちまち岩から引き出された。そしてそのまま他の陽気な神々たちと一緒に、にぎやかな歌や踊りの輪に加わっていった。そう、ついに太陽の輝く世界が戻ってきたのだった。 この神話の構成に基づき、この曲「勾玉」は形式上四つの大きなセクションで組み立てられている。
  1、 二人の主人公、アマテラスとスサノヲの提示。
  2、 アマテラスとスサノヲの争いと、スサノヲの勝利。
  3、 アマテラスの岩戸隠れ、暗闇の世界。
  4、 太陽が復活した世界の光輝く踊り。
音楽的な要素としては、アマテラスとスサノヲは対照的なテーマで描かれている。そしてどちらのテーマも日本の伝統的な五音音階をモチーフにして作曲されている。

 
 
 

私は2008年にミュンヘンで香奈と出会い、彼女との合同プロジェクトのために、マリンバソロ曲“Hartack(ハータック)”を作曲しました。 香奈は私の曲をよく理解してくれましたので、そのプロジェクトの最初から最後まで彼女と楽しく仕事をすることができました。 私は彼女から、マリンバについてたくさんのことや、さらに多くの音楽的な可能性があることを学びました。 香奈は優秀な音楽家で、現代音楽の演奏者としても、常に新しい試みやアイデアを受け入れている注目すべき存在です。 この曲は、5/8, 7/8, 9/8の変拍子と、60〜120の様々なテンポで演奏され、マリンバのビートが、人間の心拍を思わせるようにできています。タイトルの“Hartack(ハータック)”は“hart”(心臓のheartからとった言葉)と、何かを打つ時の擬音語の“tack”(これはattackの意味もかけてあります)を合わせて作った言葉です。 この曲は、Siemens Arts Program(シーメンス・アート・プログラム)により委嘱され、打楽器奏者の大森香奈のために作曲し、2009年4月7日にドイツ・ミュンヘンのシーメンス・コンサートホールで初演されました

 
 
 

「めまぐるしい思い」は打楽器奏者の大森香奈とアルトサックス奏者のマルシオ・シュスターのために作曲したものです。この曲は2人のデュオのために特化したものとなっています。これが初めて演奏されたときの感動といったら!すばらしかった!彼らの演奏の存在感が際立ち、舞台でははじけるようなエネルギーが充満し、この曲はデュオにとって最高の働きをしたと思います。現代音楽の時代に彼らは新境地にすでに立ち、これからの活躍が最も期待できるデュオといっても過言ではないでしょう。

 
 
 

“Do Not Walk Outside This Area” のアイデアは、飛行機の中から窓の外を見ていた時に浮かんだ。飛行機の翼に“Do Not Walk Outside This Area”(この領域以外歩行禁止) という警告文が書かれているのが見えたのだ。それは地上の作業員用のために書かれたということは確かなのだが、この、歩くな、という文字を、1000フィートもの上空で超現実的に読んでしまい、思わず、もし僕が座席から離れて飛行機の翼の上を歩いたとしたら、と想像してしまった。 この曲 “Do Not Walk Outside This Area” は、そんな想像から思いつき、描いたものである。 冒頭はボールが固い面ではねている音に似たリズムで、このテーマは再び曲の後半にも表れる。 初めの2つのセクションでは、クレッシェンドに到達しようともがいてうまくいかず、どちらのセクションともぶっきらぼうに終わる。 抑制された中間部では、指定された領域から逃れようと無意味な努力をする。 最後の2つのセクションでは、再び生き生きとしたリズムが戻る。 この曲は、素晴らしい演奏家であり、しかもなかなかの演技力のある大森香奈に捧げている。 彼女がこんな才能をもっているということを私が絶対に見逃すはずはない。 なので、今回はただ技巧的な曲を書くだけではなく、声の要素も取り入れてちょっとおもしろい仕掛けをしてみた。 そして、演奏しながらステージの外に出ていくというフィナーレを用意した。 そのことで演奏する領域を明確にし、音楽の流れの中に視覚的な効果を与えたかったのだ。

 
 
 

ローガンベリーは、真っ赤な可愛い小さな木イチゴ。それはマリンバ奏者を志した頃の、明るく、存在感を放つ大森香奈のよう。 でもローガンベリーが最も美味しいのは、真っ赤を通り越して、美しく熟れた頃。 まるで、彼女がドイツ留学から、魅力的な演奏家となって帰国した姿。 そんな小粒でダイナミックなマリンバ奏者、大森香奈そのものを作品にしました。 彼女がこの作品を演奏するとき、『今日はどんな赤だろう?』と想像して聞いてみてください。 きっと香奈がその時に合わせた色彩の赤い音色を放って演奏しています。 ちなみに、香奈とは小さい頃からのお付き合い(ローガンベリーの実だと緑色?!)。 苗字は偶然同じです。これも何かのご縁ですね。

 
 
 

蛾(モス)は、蝶と同じ鱗翅目(りんしもく)に属する昆虫である。 蝶と違って夜行性の蛾は、地味な色彩をしているため、昼の間はまわりの色にまぎれて目立たないが、夜になると光に誘われて灯りのもとに集まってくる。そういった蛾の行動はよく知られているが、どうしてそのような行動をとるのかは、今もまだ謎のままであるらしい。この曲はそんな謎に包まれた蛾をイメージした作品である。 香奈はずば抜けた才能に恵まれた打楽器奏者で、若手ながら華やかな経歴にあふれ、さらに実績を重ねていることは言うまでもない。 彼女のもつリズム感や巧みな手さばき、円熟した音楽性は、純粋に音楽、芸術、美とは何かということを感じさせてくれる。 私が彼女のために作曲した“メモリー・オブ・ア・モス(蛾の追憶)”は2010年にミュンヘンで初演され、彼女が成し遂げたその演奏は、この作品への深い理解を物語るものだった。 彼女と一緒に音楽を作り上げていくことはとても楽しく、本当に嬉しくて、痺れてしまうほどだ。

 
 
 

“カプリッチョ・グラツィオーゾ”は、私が大森香奈のために称賛をこめて作曲した作品です。 彼女のきらめく才能と信じられないほどのテクニックによって、まれにみる完成度と芸術性の高いマリンバ作品になっています。 私は、彼女が優勝したイタリアの第8回フェルモ国際打楽器コンクールで、彼女のすばらしい演奏に出会い、
深い感銘を受けました。 そのナチュラルなアプローチと圧倒的な音楽的才能が、余韻となって胸に残ったのです。 その後、さらに彼女の演奏に触れ、また彼女の人柄を知るにつれ、まるで心の中に種が蒔かれたように、マリンバの作品を書きたい、という思いが芽生えてきました。 彼女はこの新曲“カプリッチョ・グラツィオーゾ”に取り組んでいる間、私に何度もその様子を聴かせてくれました。 この曲を作りあげていく過程に立ち会えたようで、今思い返してもとても嬉しくなります。 私と同じように皆さまもきっと、香奈の演奏する“カプリッチョ・グラツィオーゾ”を楽しんでいただけることと思います。

 
 
 

“Cerulean(セルリアン) Landscape(ランドスケープ)”は、2013年3月に作曲した私の新しいマリンバのソロ曲で、大森香奈に委嘱されて彼女のために書きました。 タイトルの “Cerulean(セルリアン)” というのは、深い空の青色のことです。この曲がさまざまな風景を通り抜けてその表情を変えていくにつれ、この碧い色がいくつものイメージを呼び起こしてくれることでしょう。 美しい音色と豊かな表現性に焦点を当てた、抒情的でロマンティックな作品です。 これは、実力があり、すばらしい表現力にあふれるマリンバ奏者の大森香奈にふさわしい作品であると思っています。 美しく、そして優雅に、彼女が私の新しい曲を演奏してくれています。

 
 
 
 
 
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